超能力の設定がガバガバなのも良い

ヒナまつり」という漫画が完結しました。
ストーリーとしては、ヤクザのもとに未来から超能力少女がやってきて日常を過ごしていくギャグ漫画なんですけど、なにがおもしろいのかはあんまり説明できない。えっと、セリフ回しとかがおもしろい、そんなん。

 

初期はSF的な設定を掘り下げていくような雰囲気もなくはなかったんですけど、結局、具体的にはほとんど描かれることはなかったです。まぁ特に気にもならないし。

 

よつばと!」が純粋な子供の日常系漫画で「ファブル」が「よつばと!」の殺し屋バージョンみたいな感じだとするなら「ヒナまつり」はその中間くらいの感じ?この3つ、関連性がなさすぎて例えがわかりにくいですが、ぼくがそう思ってるので関連性あることにしときます。

 

ただ、よつばはまったく成長しないし佐藤は少し人間らしくなるくらいでしたが、ヒナはがんがん成長していきます。
よつばや佐藤の場合は「本人はアスペ的な無垢さを維持したまま成長はしない、ただ新たな街で新たな生活に触れることでなんらかの反応をする」といった雰囲気で、あったとしてもせいぜいが心境の変化であって成長はしない。成長が縦方向なら変化は横方向って感じ。
その点、ヒナは縦方向に伸びていきます。

 

異世界モノというジャンルがありますが、日常系が「非凡な主人公が凡庸な生活を送るもの」なら異世界モノは「凡庸な主人公が非凡な生活を送るもの」なので、あれは日常系を正確に反転させたものです。(日常系は非凡な主人公と言いましたが、これはかなりゆるい意味での非凡です。ちょっと変わってる、くらいも含めて)

 

なので「ヒナまつり」はその中間にあたる感じ。
ヒナの成長というのは、要は非凡さがなくなり凡庸になっていくということなのですが、一応、ストーリーの結末としては「悲惨な未来を変えるために行動する」という話にはなるんですけど、特に感動的にするわけでもなく、ドラマチックさを極力排除しつつ、おもしろいまま終わらせたので良かったです。

 

キャラが縦方向に伸びていく代わりに、物語を横方向には伸ばさないんですね。
よつばと!」も「ファブル」も「ヒナまつり」も設定の説明をしません。よつばと父親の出会いもほとんど説明されないし、佐藤の所属してる組織の全貌もろくに描写されない、ヒナがいた未来もはっきりとはわからない。

 

結局、ヒナが成長したところでストーリーをインフレさせて広げなかったのが良かったと思います。ヒナを凡庸にさせていくと世界設定を深掘りしてしまいそうなところをブレーキかけつつ終わらせたのが良かった。

 

ちなみにこの作者はもともとどうしようもないお涙頂戴漫画を描いていたことがあって、それは死ぬほどつまらないです。注意してください。


おしまい