じゃりン子チエと被差別部落

みなさんは「じゃりン子チエ」という漫画をご存知でしょうか。

アレ、アニメもやってたんですけど、まぁそっちのほうが有名ですかね?全国ネットでやってたのかなぁ、ちょっとわかんないですね。

 

見たことない方はぜひ見てほしいんですけどね、大阪を舞台にした漫画なんですよ。チエって小学生の女の子が主人公でホルモン屋を切り盛りしててね、道楽者の父親や猫の小鉄、同級生のヒラメちゃんたちなんかとの日常を描いた作品なんですけどね。

 

アニメにはあの高畑勲が関わっているんですよ。だからかどうかわかりませんが、ジブリアニメとは程遠い絵柄と内容ながら、しっかりとした作りになってます。主人公のチエはおよそ可愛い造形とは言えませんが、そういう視点で見るとどことなく愛らしく見えるんじゃないかな?

 

この作品は基本的には日常コメディで明るいんですけど、どことなく暗さというか、後ろめたさみたいなものがあるんですよ。ぼくも子どもの頃にアニメを見てましたが、なんとなく不穏なモノを感じていました。その正体とはいったいなんなのか。

 

呉智英って人がいるんですけどね。くわしくはwikipediaでも見てもらうとして、この人は漫画評論もやってたんですね。で、この人の漫画評論は正直たいしておもしろくないというか、あまり的を射てるとは思えないんですが、この「じゃりン子チエ」については鋭い指摘をしてるんですよ。

 

氏曰く、チエの住んでいるのは被差別部落である、と。そして友人のヒラメちゃんは在日コリアンだとも言ってるんですね。

急いでフォローしておくと、この作品には被差別部落であるという説明はないし、大阪の西成を舞台にしていると明言されています。でもね、この指摘はすごいわかるんですよ。

 

じゃりン子チエ」の醸し出すなんとも言えない暗さ。それはマイノリティによる暗さである。考えてみてください、チエちゃんはまだ10歳くらいなんですよ、たしか。んで、今で言うならほぼネグレクトに近いような環境に生きている。この作品はサザエさんのように時間経過をしない作品なんですが、決してチエちゃんの未来が明るいものになることはないと思わせる独特の雰囲気を放ってるんですね。

 

土地による呪縛。

みなさんは小学校の時に部落問題の啓蒙ビデオなんて見せられたことはあるんでしょうか?関西圏だけかな?アレを見た時のなんともいえない感覚ってあるんですけど、ああいう啓蒙ビデオよりも「じゃりン子チエ」のほうがよほど心に響きますし、わかりやすい。

 

もう一度言っておきますが「じゃりン子チエ」に被差別部落であるという描写はありません。呉智英の独断です。でもとてもわかるんですね、チエはおそらくマイノリティであり、ずっとホルモン屋をやっていくだろう、と。そう確信できる独断なんですよ。

 

そんなわけでヒマな人は機会があれば見てください。まぁ普通におもしろい作品なので、そういう視点で見なくてもいいと思いますが。まぁ、ね。

 

 

おしまい